浮気慰謝料の「違約金」の定め方、請求方法について

浮気慰謝料の「違約金」の定め方、請求方法について

 

浮気相手と慰謝料についての合意を締結するとき「違約金」の約束をするケースもよくあります。

慰謝料の約束をしても、支払ってくれないことがあります。

違約金とは、合意内容を破ったときに払わせる損害金です。

浮気慰謝料の合意時に違約金を定めておくと、将来相手が再度同じ方と不倫した場合などに違約金を払わせることができます。

 

ただし違約金条項は必ず有効になるとは限りません。高すぎると無効になったり減額されたりする可能性もあるので注意が必要です。例えば、不貞行為「1回」につき100万円というのは、公序良俗に反する恐れがあるといえるでしょう。(この場合、3回していたら300万円となりますから、高額に過ぎる可能性があります。)

 

今回は浮気慰謝料の違約金の定め方や請求方法を弁護士が解説します。

 

1.違約金とは

違約金とは、約束が破られたときに払わねばならない損害金です。

たとえば「二度と浮気は繰り返さない」と約束した上で、「次回浮気をしたら200万円の違約金を支払う」とか、「次回面会したら10万円の違約金を支払う」などと取り決めます。

 

違約金条項を定めておくと、将来相手が約束に違反して浮気や面会に及んだら違約金として定めておいた金額を請求できます。相手が支払いを拒否したら合意に基づいて訴訟を起こして取り立てることも可能です。

 

2.違約金を定めるメリット

なぜ違約金条項を定める必要があるのでしょうか?メリットをみてみましょう。

 

2-1.浮気の再発を防ぎやすくなる

浮気が発覚しても夫婦関係を継続する場合「今後は二度と浮気しない」と約束するケースがよくあります。

 

しかし単に「二度と浮気しない」と約束しただけでは、約束が破られたときのペナルティが不明です。

相手方と会わないようにしておく担保を得ておくことがベストです。

そうでないと、相手にとっては再度の浮気に及ぶハードルが低くなってしまうでしょう。

「浮気を繰り返したときには違約金○○円を支払う」という違約金条項があれば、相手は「今度浮気したら違約金を払わねばならないので、浮気をやめておこう」と考えます。

違約金条項を入れると心理的圧力から、浮気の再発を防ぎやすくなる効果を期待できます。

 

2-2.浮気が再発したときの損害賠償が簡単になる

違約金条項がない場合、相手に2度目の浮気慰謝料を請求しようとしても「1度目に高額な慰謝料を払っているから全額支払い済みである」「請求金額が高すぎる」などと争われるケースが少なくありません。

実際は、示談後の不貞行為に関しては、別途、慰謝料が発生するので、「1度目に高額な慰謝料を払っているから全額支払い済みである」「請求金額が高すぎる」という反論は的を射ていません。

ところが、違約金条項があれば約束通りにスムーズに支払いを受けやすくなりますし、訴訟でも証拠となります。

万一再度の浮気が発覚したときに、損害賠償が楽になるメリットを期待できます。

 

3.違約金条項のパターン

不倫慰謝料に関する違約金条項には、以下のようなパターンがあります。

3-1.再度浮気したら払わせるパターン

1つ目は再度の浮気を禁止した上で、合意後に再び浮気したら違約金を払わせるパターンです。もっともオーソドックスな違約金の定め方です。

 

3-2.接触禁止条項に反したら違約金が発生するパターン

浮気慰謝料の支払いを合意する際には「接触禁止条項」を入れるケースが多々あります。

接触禁止条項とは、「今後一切連絡をとらない」とする約束です。実際の面会だけではなくメールやLINE、電話など一切の方法による連絡を禁止するケースが有効です。

 

接触禁止条項に違反したときの違約金を定めると、約束違反して連絡をとりあっただけで違約金を請求できます。不倫関係にまで発展していなくても支払いを受けられるので、肉体関係を証明する必要はありません。接触禁止条項は、性的行為とは異なりますので、高額な違約金は社会的相当性がない場合があります。

 

 

4.違約金条項の効力

当事者間で違約金条項を定めた場合、違約金は法的に有効になります。

違約金の金額も自由に定められるので、相手が約束を破った場合には決めておいたとおりの金額の違約金を請求できます。相手が払わない場合には裁判を起こして違約金についての合意を証明すれば、裁判所が相手に支払い命令を下してくれます。ただし、浮気であれば証明し、また、接触禁止条項に違反したことの証明は必要です。

 

違約金条項には法的効力があるといってよいでしょう。

ただし違約金の金額があまりに高すぎると公序良俗違反となり、違約金条項が無効になる可能性がありますし、全部無効にならなくても相当程度まで減額されるケースがよくあります。経験があるのはスポーツ選手が、違約金を数千万円に設定しており、逆に返還を求められるというようなことがありました。違約金条項については、適正さが求められるといえるでしょう。

 

5.違約金の金額

違約金の金額は、適正に定めるべきですが、法律によって「いくらからいくらの範囲にすべき」という明確なルールはありません。ただし、いわゆる不貞の慰謝料請求の賠償額の裁判例で出される金額を上回る金額からは注意が必要なのではないかと思います。

 

実際に有効となる金額は、事案の内容や支払い義務者の資力、「何の違反行為に対する違約金なのか」などの諸事情によって異なります。繰り返しになりますが、電話やLINEをしたことに対する違反行為の場合は高額な違約金は認められません。

 

相当な違約金の金額は「再び不倫した場合の違約金」なのか「単に接触禁止条項に違反した場合の違約金」なのかで違ってくるので、それぞれみてみましょう。

 

5-1.不貞行為に及んだ場合の違約金

いったん慰謝料を払って不倫しない約束をしたにもかかわらず、再度不倫関係になってしまった場合は高度な違法性が認められます。高額な違約金であっても認められる可能性が高いでしょう。

たとえば500万円程度の違約金であれば、通常の不倫慰謝料の相場を少し上回る程度であれば、高いけれども有効となる可能性もあり得るでしょう。

 

一方、1000万円を超える違約金を定めると、一定額まで減額される可能性が高いでしょう。既に受け取っていた場合は不当利得返還請求が起こされることもあり得ます。

一般的な不倫の違約金条項としては、100万~500万円以内で定めるのが適切と考えます。

 

ただし支払い義務者の収入や資力が高く500万円では再発防止の抑止力にならない場合には、さらに高額な慰謝料を定めてもかまいません。

 

5-2.接触禁止条項に反した場合の違約金

不倫慰謝料の合意をするときに「接触禁止条項に違反した場合の違約金」を定める場合もあります。

接触禁止条項に違反した場合の違約金は「連絡をとっただけ」で払わねばなりません。

実際には不倫に及んでいなくても払う必要があるので、支払い義務者の違法性は低いといえます。

 

相当な違約金の金額は、再び不倫したケースに比べて低くなると考えましょう。

裁判例では1000万円の違約金を定めていたケースにおいて、接触禁止の違約金は150万円の範囲で有効としたものがあります(東京地裁 平成25124日)。

 

6.違約金を請求する方法

浮気相手といったん合意したにもかかわらず再度浮気されたり接触禁止条項に反して連絡をとられたりしたら、以下の手順で違約金を請求しましょう。

 

6-1.証拠を集める

まずは「相手が約束を破った証拠」を集めるべきです。

「再び浮気をしている」「約束を破って連絡をとった」などと主張しても、証拠がなければ相手は認めない可能性が高いからです。

 

再び浮気をされたなら、再度相手と配偶者が肉体関係をもっている証拠を集めましょう。

接触禁止条項に違反して違約金を請求する場合には、LINEやメールなどで連絡を取り合っている証拠を手元に集めるべきです。画面のスクショを撮影したり、画面を自分のスマホで写真撮影したりすると良いでしょう。

 

6-2.相手に請求する

証拠が揃ったら、相手に違約金の請求をします。

メールや電話でもかまいませんが、インパクトを強めるためには内容証明郵便で請求書を送るようお勧めします。その際は弁護士に依頼をしましょう。

 

相手と話し合って合意できれば、定められた金額の違約金の支払いを受けられます。

 

6-3.公正証書がある場合

相手が支払いに応じない場合には、強制的な手段をとらねばなりません。

違約金を定めた合意書が「公正証書」かどうかにより、手続内容が変わってきます。

 

違約金を定めた不倫慰謝料の合意書を「公正証書」にしていたら、公正証書を使ってすぐに相手の資産を差し押さえられる可能性があります。(条件成就執行文が必要になることがあります。)

預金や保険、給料、不動産や車などの資産が差し押さえ対象となるので、資産内容を調べて裁判所へ差し押さえの申し立てをしましょう。

 

ただし差し押さえ対象の資産や債権は債権者が特定しなければなりません。相手の資産が不明な場合には裁判所における財産照会や情報取得手続きなども利用できるので、弁護士へ相談してみてください。

 

また公正証書がある場合、相手との任意交渉のステップを飛ばして、(条件成就執行文などがあれば、)すぐに差し押さえを行うことも可能です。

 

6-4.公正証書がない場合

以前に慰謝料についての合意をしたときに公正証書を作成しなかった場合、すぐに差し押さえはできません。

まずは裁判を起こして判決を出してもらう必要があります。

判決が出たら、判決書を使って相手の給料や預金などの資産を差し押さえられます。

 

このように、慰謝料の合意を公正証書にしていたかどうかで違約金の取り立ての容易性が大きく変わってきます。公正証書があるとスムーズに差し押さえができるので、慰謝料について合意するときには、多少の手間と費用をかけても公正証書にしておくようおすすめします。

 

7.違約金を定めるなら弁護士へ相談を

これから不倫相手と話し合って違約金を定めるなら、弁護士に任せるようお勧めします。

 

7-1.適正な金額を定められる

違約金の金額を定めるときには、法的に適正な金額にすべきです。

高すぎると公序良俗違反となって無効になる可能性がありますが、低すぎると浮気再発の抑止力になりません。

適正な違約金の金額は状況によって異なり、素人の方には判断が困難です。

弁護士に相談すれば、事案に応じた適正な違約金の金額を定められるので安心です。

 

7-2.公正証書で確実な取り決めができる

自分たちだけで慰謝料問題を話し合った場合、手間がかかる公正証書の作成をしないで済ませてしまうケースが多々あります。

しかしそれでは、将来払われないときにあらためて訴訟をしなければならず、大変な労力がかかってしまいます。訴訟の最中に相手が財産を隠してしまうリスクも高まります。

弁護士が関与すれば公正証書の作成手続きもサポートするので、将来払われないときにも安心です。

 

7-3.破られたときにもスムーズに対応できる

実際に相手が約束を破って強制執行などの手続きを行う際、自分ひとりで裁判所の手続きを進めるのは難しいでしょう。

弁護士に依頼すれば、相手に対する内容証明郵便の送付や交渉、入金確認、強制執行(差し押さえ)の手続きなどスムーズに進められます。

 

当事務所では男女問題、浮気トラブルの解決に積極的に取り組んでいます。名古屋で不倫問題にお困りの方がおられましたらお気軽にご相談ください。

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