不倫した配偶者から離婚をつきつけられたときの対処方法

不倫にのめり込むと、不倫相手と再婚するために今の配偶者へ離婚を要求する人がいます。
ときには不倫相手に子どもができて、離婚を焦るケースもあります。

もしも夫や妻が不倫して、離婚をつきつけてきたらどうすれば良いのでしょうか?

離婚に応じる必要はないので、あせらずに対処しましょう。

不倫した配偶者から離婚をつきつけられたときの対応方法をパターン別にご紹介します。

1.離婚に応じなければ離婚は成立しない

配偶者が不倫した場合、離婚を要求されても応じる必要はありません。
法律上、不倫した本人は相手の意思に反して離婚を請求できないと考えられているからです。不倫した配偶者を「有責配偶者」といいます。

自分で不倫して婚姻関係を破綻させておきながら、身勝手で離婚を実現するのはあまりに不公平です。そこで有責配偶者からの離婚請求は原則として認められないというルールがあります。

2.離婚を拒否したときに予想される流れ

2-1.離婚調停を申し立てられる

不倫した配偶者が離婚を要求してきたとき、こちらが拒否し続けていれば相手は離婚調停を申し立てるでしょう。
ただし調停は双方の合意がないと成立しないので、調停でも離婚を拒否しているといずれ不成立になって終了します。

2-2.離婚訴訟を起こされる

調停が不成立になったら、相手は離婚訴訟を起こす可能性があります。
ただ訴訟では相手が有責配偶者である以上、こちらが離婚を拒否していれば離婚は認められません。有責配偶者の場合の判決文は、「有責配偶者であるから認められない」と書いてあるだけということもあり、細かい審理もしてもらえないケースもありました。
こうして判決で離婚請求が棄却され、裁判後も戸籍上の夫婦関係が続きます。

2-3.別居状態になる可能性が高い

確かに離婚訴訟を起こされても離婚は認められませんが、夫婦関係が完全に元通りになるのは通常困難です。
訴訟になる頃にはほとんどの夫婦が別居するので、多くの場合には訴訟後も別居状態が継続するでしょう。
なおこちらの収入が相手より低い場合には、別居中の婚姻費用を請求できます。

2-4.別居が10年以上になると離婚が認められる可能性がある

有責配偶者からの離婚請求は基本的に認められませんが、別居状態がおおむね10年以上(こどもがいない場合は5年程度)に及ぶと、裁判でも離婚が認められやすくなります。

相手の不倫が原因で夫婦関係が破綻したとしても、別居後10年程度が経過して相手があらためて離婚訴訟を申し立てると、離婚が認められる可能性があります。

3.有責配偶者からの離婚を拒否するための条件

不倫した相手から離婚請求されても、拒否し続けていれば無理に離婚させられることはありません。
ただしそのためには「不倫の証拠」が必要です。つまり、相手方が「有責配偶者」と認定されなければ、そもそも「有責配偶者からの離婚請求禁止の法理」の適用はないのです。
したがって、証拠がなかったら、相手が離婚訴訟を起こしたときに「有責配偶者」と証明できません。
相手が適当な離婚理由(暴力、暴言、性格の不一致、性交渉の拒否など)を仕立てあげて、裁判所が信用して離婚が認められてしまう可能性もあります。
「有責配偶者からの離婚請求」であること証明するためには、配偶者と不倫相手の肉体関係を示す証拠が必要です。
肉体関係を証明できなければ法律上の「不貞」にならず、有責性が認められません。ただし、肉体関係の証明に至らなくても、「婚姻を継続し難い重大な事由」においての資料として使える可能性もありますので、まずは、弁護士にご相談ください。

不倫した配偶者から離婚を請求されたら、以下のような証拠を集めましょう。

集めるべき不倫の証拠の例

肉体関係を直接証明できる証拠

できる限り、以下のように肉体関係を直接証明できる証拠を集めるべきです。

  • 一緒にホテルに行ったり旅行にでかけたり、相手の家に宿泊したりしたことがわかるメールやSNS、LINEメッセージなど
  • 性交渉していることがわかる動画や画像
  • 浮気を認める自認書
  • ホテルを利用したことがわかる明細書や領収証
  • 肉体関係をもったことがわかる日記の記載
  • 浮気の現場を押さえた探偵の報告書
  • 本人が不貞行為を認める自認書や録音データ

間接的に使える不貞の証拠

ただし以下のような間接的な証拠であっても、多数集めることによって不貞の立証に役立つ可能性があります。

  • クレジットカードの明細書
  • 通話明細書
  • デート中に撮影した画像や動画
  • 相手からもらったプレゼント
  • 相手と仲良く会話しているLINEやSNS、メールなどのやり取り

離婚する場合でもしない場合でも、「不貞」の証拠は極めて重要です。
相手から離婚をつきつけられたら、相手に気づかれないように注意しながら証拠集めを開始しましょう。

4.離婚しても良い場合の対処方法

不倫した相手から離婚をつきつけられたとき、とるべき対応は「離婚してもよいかどうか」で異なります。
離婚しても良いなら、以下のように対応しましょう。

4-1.証拠を集める

離婚に応じる場合でも、証拠集めは極めて重要です。証拠がなかったら相手は不倫を否定して、「慰謝料を払わない」と主張するでしょうし、不倫相手にも慰謝料請求できないでしょう。

まずは上記で紹介したような不貞の証拠を集めるべきです。

4-2.離婚条件の交渉をする

次に相手の不貞を前提に離婚条件の交渉をします。

不倫されたときの離婚条件

不倫されたとき、離婚条件にどういった影響を及ぼす可能性があるのか、説明します。

慰謝料

相手が不倫して離婚するなら、慰謝料を請求できます。

また相手は有責配偶者である以上、あなたが離婚に応じないと離婚を実現できません。つまり、相手が離婚できるかどうかはあなたの気持ち1つにかかっている状態です。
任意で離婚に応じることを条件に、相場よりも高額な慰謝料請求をしやすくなります。
相手の資力にもよりますが、最大で500万円程度の慰謝料を請求する人もいます。

なお不貞による離婚慰謝料の相場は100~300万円程度なので、相場とおりで良ければその範囲内で取り決めるとよいでしょう。

相手から納得できる金額の慰謝料提示がなければ、無理に離婚に応じる必要はありません。

財産分与

不倫されたからといって受け取れる財産分与額が多くなるわけではありません。
ただ、話し合いで離婚に応じる条件として、こちらに多めの財産分与を行うよう請求することは可能です。慰謝料代わりに家や預金などの財産を分与してもらうケースもよくあります。たとえば離婚に応じる代わりにすべての財産を分与してもらってもかまいません。
また、慰謝料の分割払いとして、離婚後扶養を一定期間(2~3年程度)求めることも考えられるでしょう。

親権や養育費

相手が不倫したからといって、こちらが親権をとれるとは限りません。
不倫しても、子どもにとっては良い親であるケースも考えられます。
また相手が親権をとった場合、離婚後は養育費を払わねばなりません。

「相手が不倫したから当然親権をとれるはず」と思い込むと危険です。元家裁所長の文献でも、裁判所は、風俗で働いていたり不貞をしていたりしていることは、重視しておらず、子の福祉に影響が出る場合に初めて取り上げる、という趣旨を述べたものがあります。

親権を獲得したいなら、当初の段階から慎重に対応していく必要があります。

4-3.離婚公正証書を作成する

離婚条件が決まったら、公正証書にまとめましょう。
特に慰謝料や財産分与を分割払いにしたり養育費を払ってもらう約束をしたりしたら、公正証書が必須です。公正証書があれば相手が不払いを起こしたとき、すぐに給料や財産を差し押さえられます。

4-4.離婚届を提出する

協議離婚の場合は、離婚公正証書ができたら離婚届を作成して役所へ提出しましょう。

5.離婚したくない場合の対処方法

5-1.離婚を拒否する

離婚したくない場合、離婚を拒否し続けることが大切です。
相手は訴訟を起こしても離婚できないので、拒否さえし続けていれば無理やり離婚させられる心配は要りません。

5-2.不貞の証拠を集める

離婚しない場合でも、不貞の証拠が必要です。証拠がなければ訴訟を起こされたときに相手が有責配偶者である事実を証明できません。
相手から離婚を要求された段階で、証拠集めを開始しましょう。

5-3.離婚届不受理申出をする

こちらが離婚を拒否していても、相手が勝手に離婚届を作成して役所へ提出してしまう可能性があります。役所が離婚届を受理すると、戸籍上離婚が成立してしまうでしょう。
離婚無効確認の手続きはできますが、非常に時間と手間がかかってしまうので、事前に離婚届を阻止すべきです。
相手が勝手に離婚届を提出できないよう、役所へ「離婚届不受理申出」をしておくようお勧めします。離婚届不受理申出をすると、申出人の意思確認できない限り離婚届が受け付けられなくなって、勝手な離婚届の提出を防げます。

5-4.別居されたら婚姻費用を請求する

不倫した相手からの離婚請求を拒否していると、家出されるケースがあります。ときには不倫相手と同棲しはじめて、生活費も払わなくなる人もいます。
もしも相手が家から出ていって生活費を払ってもらえなくなったら、家庭裁判所で「婚姻費用分担調停」を申し立てましょう。婚姻費用分担調停とは、夫婦の生活費を求める調停です。
調停委員が間に入って相手に適正金額の生活費を払うよういってくれるので、相手が合意すれば生活費が払われるようになります。
相手が納得しない場合には「審判」となり、審判官が相手に生活費の支払い命令を出してくれます。
相手が調停や審判の内容に従わない場合、差し押さえもできます。

6.不倫トラブルは弁護士へご相談ください

不倫した配偶者から離婚を要求されると、困惑してしまうでしょう。相手から強い勢いで責められて「自分が悪いのか」「もう離婚するしかないのか」と精神的に追い詰められる方も少なくありません。

しかし相手は有責配偶者です。離婚したくないなら、無理に応じる必要はありません。離婚するとしても強気で交渉できるので、後悔しないために有利な離婚条件を定めましょう。あきらめずに弁護士までご相談ください。

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