不倫しているけれどもDVを受けている場合の対処方法

不倫しているけれどもDVを受けている場合の対処方法

 

「相手からは不倫したことを責められているけれども、長年相手からDVを受けてきました。慰謝料を払ってもらうことはできないのでしょうか?またこちらはDV被害者でも慰謝料を払わねばならないのでしょうか?」

といったご相談を受けるケースが少なくありません。

 

こちらは不倫していても、相手からDV(家庭内暴力)を受けているケースです。この場合、本来であればお互いが慰謝料を払い合うべきですが、証拠不足によりDV被害者側が不利な立場となってしまう可能性があります。このように、法律的には、お互いが慰謝料を支払うべき場合でも証拠次第によって、慰謝料を請求できない場合もあるかもしれないのです。

 

この記事では不倫しているけれどもDVを受けている場合の注意点や対処方法を弁護士がお伝えします。相手からのDVが辛くてつい不倫してしまった方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

1.不倫したら慰謝料を払わねばならない

日本の法律では、不倫すると配偶者に慰謝料を払わねばなりません。

不倫を法律用語では「不貞」といいます。不貞とは、配偶者のある人が配偶者以外の人と肉体関係を持つことです。不貞は配偶者への重大な裏切り行為であり、配偶者に大きな精神的苦痛を与える行為といえます。よって不貞行為をすると、配偶者の精神的苦痛を慰謝するため、慰謝料を払わねばなりません。

 

1-1.相手からDVを受けていても慰謝料は払わねばならない

それでは相手からDVを受けていても慰謝料を払わねばならないのでしょうか?

確かにその場合、こちらが被害者なので不倫の慰謝料を払うことに納得できない方もいるでしょう。

しかしDV被害者であっても、不倫したら慰謝料を払わねばなりません。DV被害を受けたからといって不倫(不貞行為)が正当化されるわけではないのです。

 

DVの問題はDVの問題、不倫の問題は不倫の問題で両者は別に考える必要があります。

相手からDVを受けてきた現実があるとしても不貞の責任は発生するので、相手から請求されると慰謝料を払わねばなりません。

 

1-2.不倫慰謝料の相場

不倫慰謝料の相場は、おおむね100300万円程度です。

婚姻年数が13年程度の場合には100150万円程度、婚姻年数が310年程度の場合には150200万円程度、婚姻年数が10年以上になると300万円を超えるケースも出てきます。

なおこの相場の金額は夫婦が離婚する場合の金額です。不倫が発覚しても夫婦が離婚しない場合、不倫の慰謝料の相場は100万円以下になります。

 

1-3.不倫の証拠となるもの

不倫していたとしても、相手が不倫の証拠をもっていなければ相手は不倫慰謝料を請求できません。不倫慰謝料を請求できる証拠としては「肉体関係を証明できるもの」が必要です。

法律上の不貞とは「既婚者が配偶者以外の人と肉体関係を持つこと」だからです。

男女が親しくしていても、肉体関係を示す証拠がなければ不倫の慰謝料は基本的に請求できません。以下で不倫の証拠となるものをご紹介します。

 

  • 性交渉しているときの動画や写真
  • 肉体関係をもっていることがわかるLINEやメールのやり取り
  • 肉体関係をもっていることがわかる日記などの記録
  • 当事者が肉体関係を認める自認書
  • ホテルの領収証など
  • 産婦人科の領収証、妊娠した胎児のエコー記録など
  • 不貞現場を押さえられている探偵の調査報告書

 

また以下のようなものは直接的に肉体関係を示すものではありませんが、不倫関係を推測させる証拠になります。

  • デート代などを支払ったクレジットカードの明細書
  • 交通ICカードの記録
  • 親しげにやり取りしているメールやLINEの記録
  • 頻繁に電話していることがわかる通話明細書
  • 不倫相手と会っていることがわかる日記やスケジュール帳など

 

相手がどこまでの証拠を持っているかによってもこちらのとるべき対応が変わってきます。

不倫トラブルが起こったら、相手が証拠を持っているかどうかにも留意すべきといえるでしょう。

 

2.DVを受けていたら慰謝料を請求できる

「不倫している場合、DVを受けていても相手に慰謝料請求できないのだろうか?」

と不安になる方が少なくありません。

DVを受けている場合、不倫していても相手には慰謝料を請求できます。

DVは人格権に対する重大な侵害行為であり、たとえ被害者が不倫していたとしても正当化されるものではないためです。

 

ただしDVで慰謝料を請求するには暴力の証拠が必要です。証拠がないと、相手がDVを否定したときに慰謝料を請求できなくなってしまいます。DVの証拠を集めるのは簡単ではないので、立証できずに慰謝料を請求できないケースは珍しくありません。

DV被害を受けて相手に慰謝料を請求したい場合には、証拠固めをしっかり行うことが重要となってきます。

2-1.DVの慰謝料の相場

DVの慰謝料の相場は50万円~300万円程度です。

 

DVの慰謝料が高額になりやすいケース

以下のような場合、慰謝料が高額になりやすい傾向があります。

  • DVの態様が悪質
  • DVの頻度が高い
  • 暴力の程度がひどい
  • 相手の暴力によって被害者が大ケガをした
  • 被害者に後遺症が残った
  • 被害者が働けなくなった
  • 加害者が反省していない
  • DVが行われた期間が長い

 

2-2.DVの証拠

DVを受けた場合に相手に慰謝料を請求するには証拠が必要です。以下にDVで証拠となるものをご紹介します。

  • ケガの部位の写真

相手に暴力を振るわれてケガをした場所の写真を撮影しましょう。ケガが治ってしまうと写真を撮影できなくなるので、殴られたりしたら早めに撮影することが重要です。

  • 相手が暴れているときの動画や録音データ、写真

相手が暴れている時の動画や録音データ、写真などもDVの証拠になります。相手が暴力を振るい始めたら、スマホなどを使って記録をとりましょう。

  • 詳細な日記

相手から振るわれた暴力について詳細に記録している日記があれば、DVの証拠になります。

DVを受けた日に限らず、できれば毎日のように記録している日記の方が、信用性は高くなりやすいでしょう(後から捏造するのが難しいため)。

また暴力については具体的かつ詳細に記録することが重要です。単に「殴られた」「暴力を振るわれた」と書くのではなく「右の拳で右の頬を殴られた」「その後髪の毛をつかまれて引っ張り回された」などと詳細に書き残しましょう。

 

  • 診断書

ケガをしたら、すぐに病院に行って医師の診察を受けましょう。その際に発行してもらえる診断書もDVの証拠になります。

DVを受けた場合、医師に理由を正直に話さない人が少なくありません。配偶者をかばうためや体裁が悪いなどの理由で「転倒した」などと嘘をついてしまうのです。しかしそのようなことをすると、DVの証拠として弱くなってしまう可能性があります。しっかり「夫に殴られたために打撲」と書いてもらいましょう。

医師の診察を受ける際には、配偶者からDVを受けていることを正直に伝えましょう。

  • 友人や知人の証言

友人や知人、家族などの証言もDVの証拠になりえます。被害者との関係性が遠い人の方が、証言の客観性が保たれやすいといえるでしょう。たとえば日頃からDVの相談をしている友人などがいたら、DVの証言をしてもらいやすくなります。後日、証言は拒否されてしまう可能性もあるので、相談内容を録音するのも一つです。

  • DVを相談していた際の記録

メールやLINEなどで親族、友人知人などにDVの相談をしていたら、そういった記録もDVの証拠にできます。今までにメールやLINEなどで暴力について相談したことがあれば、相談相手からの返答内容も合わせてデータを消さずに保存しておきましょう。

 

3.婚姻費用を請求できない可能性がある

不倫しているけれどもDV被害を受けている場合、婚姻費用の請求でも問題が生じる可能性があります。

婚姻費用とは、夫婦が分担すべき生活費です。

夫婦が別居すると、収入の低い方は高い方へと婚姻費用を請求できます。

夫婦にはお互いに相手の生活を維持しなければならない扶養義務があるためです。

ところが不倫していると、不倫した側は不倫された側へ婚姻費用を請求できないと考えられています。自ら不倫によって夫婦関係を破綻させておきながら、婚姻費用を請求するのは信義則に反すると考えられるためです(ただし不倫した側が未成年の子どもを養育している場合、子どもの養育費相当分の婚姻費用は請求できます)。もっとも、有責性の程度、つまり別居につき、主として、又は専ら、原因がDVであったら、婚姻費用の請求は信義則に違反するとまではいえないと思います。

 

DV被害を受けていても、この基本的な考え方は同じです。

よってDV被害者が不倫してしまった場合、別居しても相手に婚姻費用を請求できない可能性があります。そうなってくると、生活費が足りずにDV被害者側が困窮してしまうおそれが出てくるので対応に注意が必要です。

 

4.別居後の不倫の場合

不倫した方がDV被害を受けている場合、「不倫が行われた時期」によってもお互いの関係性に影響が及んできます。

不倫によって慰謝料が発生するのは、基本的に同居中に不倫が行われた場合です。(もっとも事実認定の問題で例外が生じることもあります。)

すでに別居して夫婦関係が破綻してしまっていれば、その状態で不倫をしても慰謝料は発生しません。

不倫によって慰謝料が発生するのは「不倫が原因で夫婦関係が破綻した」という因果関係があるからです。すでに夫婦関係が破綻して別居している場合、不倫によって夫婦関係が破綻したわけではないので慰謝料は発生しないと考えられます。

 

たとえばDVがひどくて相手との同居生活から逃げるために別居したとしましょう。

別居後に知り合った人と交際したとしても、基本的に慰謝料を払う必要はありません。

一方、別居前から交際していた場合には慰謝料を払う必要があります。

 

DVと離婚を検討する場合には、不倫が開始された時期についても注意しましょう。

 

5.不倫していないのにDV加害者から「不貞している」と言われた場合

DVの加害者は、配偶者が不倫をしていないのに「不倫している」と決めつけてくるケースが珍しくありません。

もしも不倫していないのに「不倫している」と言いがかりをつけられたら、どのように対応すれば良いのでしょうか?

 

基本的には、不倫していなければ慰謝料を支払う必要はありません。こちらからの慰謝料請求や婚姻費用の請求も可能です。しかしときには、第三者からみて「不貞をしている」と思われても仕方のないような事情があるケースも考えられます。その場合、本当は不倫していなくても裁判上「不倫した」と扱われる可能性があります。

不倫していないなら、誤解が生じるようなことをすべきではありません。また誤解されてしまった場合、誤解を解くための対応が必要です。裁判になってしまった場合には不倫していない事情を証明しなければなりません。専門知識がないと不利になってしまうおそれが高いので、不倫を疑われたなら早めに弁護士に相談しましょう。

 

 

6.DVを受けている場合に不倫したときの対処方法

DV被害を受けている場合に不倫した場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?

以下でDVを受けている場合に不倫してしまった場合の対処方法をお伝えします。

6-1.不倫相手とは関係を断つ

まず不倫相手との関係は断つようおすすめします。不倫関係を続けていると、相手も証拠を集めやすくなり、こちらが不利になる可能性が高まります。また「反省がない」と判断され、こちらの立場が悪くなる可能性もあります。

相手に不倫を知られていない場合はもちろんのこと、すでに相手に不倫を知られている場合であってもなるべく早めに不倫関係を終わらせましょう。

本当に交際したい相手なら、離婚が成立してからにすべきです。

6-2DVの証拠を集める

次にDVの証拠を集めましょう。DVを理由に相手に慰謝料請求するにはDVの証拠が必要となるためです。

DVの証拠となるのは、先にもご紹介したように動画や写真、音声データや診断書、日記などです。離婚の紛争が本格化する前にできるだけ多くの証拠を集めましょう。

6-3.不倫慰謝料を拒否できる事情がないか検討する

相手から不倫慰謝料を請求されても、必ず払わねばならないわけではありません。慰謝料を拒否できるケースもよくあります。たとえば以下のような場合、慰謝料を払う必要はありません。

  • 相手が根拠なく慰謝料請求している(証拠を持っていない場合や思い込みのケースなど)
  • 不倫慰謝料請求権の時効が成立している
  • 別居後の不倫である

慰謝料を請求されたら、慰謝料支払を拒める事情がないかどうか検討しましょう。慰謝料が発生するかどうか判断するには法律的な知識が必要となるので、迷ったときには弁護士に相談するのが良いでしょう。

 

6-4.不倫慰謝料を減額できる事情がないか検討する

不倫慰謝料を払わねばならないとしても、相手の請求額が適切とは限りません。相手が相場より高額な金額を要求していれば、相場まで下げさせるべきです。また慰謝料を減額すべき事情があれば、相場よりも慰謝料を下げられる可能性もあります。

たとえば不倫の期間が短い、不倫した回数が少ない、不倫が開始した当初の時期にすでに夫婦関係が相当悪化していたなどの事情があれば、不倫慰謝料は比較的低額になりやすいと考えられます。

不倫慰謝料を請求されたら、慰謝料を減額できる事情がないか検討しましょう。

 

6-5.相手と交渉する(弁護士に依頼する)

離婚や慰謝料の問題を解決するには、お互いに話し合いをしなければなりません。

ただしDV被害を受けている場合、相手と対等に交渉するのは困難になりがちです。相手が興奮状態になると、暴力を振るわれて被害を受けてしまう可能性もあります。

DV被害を受ける可能性があるなら、相手とは別居して身の安全を確保した状態で交渉するのが良いでしょう。危険度が高いなら保護命令を出してもらうことも検討すべきです。

またDV被害者が自分で離婚や慰謝料の交渉をすると暴力の危険が高まりますし、相手としても興奮状態となってまともに話を進めにくいでしょう。DV事案で相手と直接交渉するなら、弁護士に代理人を依頼するようおすすめします。

 

6-6.調停や訴訟で離婚や慰謝料について決定する

交渉しても離婚や慰謝料問題について合意できない場合には、調停や訴訟を利用しなければなりません。まずは家庭裁判所で離婚調停を行いましょう。

調停では調停委員が間に入ってくれるので、相手と直接顔を合わせて話をする必要がありません。DV事案の場合「別室調停」にしてもらえて相手と偶然にも鉢合わせしないように配慮してもらうことも可能です。事前に裁判所へ伝えておけば身の安全が確保されやすいので、安心して調停を利用しましょう。

 

調停でも離婚や慰謝料問題について解決されない場合には、離婚訴訟で解決を図らねばなりません。離婚訴訟では、裁判官が証拠にもとづいて離婚問題や慰謝料問題について判断します。そのどきに重要なのは、どこまでDVの立証ができるか、相手がどれほどの不貞の証拠を持っているかです。事前準備が重要といえるので、訴訟前にはDVの証拠をしっかり集めておきましょう。

 

名古屋駅ヒラソル法律事務所では、不倫や離婚、DVの問題似積極的に取り組んでいます。不倫トラブルや相手からのDV被害に苦しんでいる方には親身になって対応しますので、気軽に弁護士までご相談ください。

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