不倫って違法なのですか。

学説では、不貞の慰謝料否定説も有力です。

 

1 婚姻関係破綻の有無、第三者の行為の態様にかかわらず、常に不法行為になる見解

  一般的にこの考え方を支持する人は少ないといわれますが、いわゆる貞操義務違反からすれば、この見解が最高裁の見解に近いようにも思います。

 

2 事実上の離婚後は夫婦後の貞操義務は消滅するから、その後に夫婦の一方と不倫をしたとしても第三者に不法行為責任は生じないという考え方です。

  1をベースにその範囲を減算する考え方で最高裁の判例となっています。問題は、「事実上の離婚」をどのようにとらえるかです。この点、2説では、法律婚の夫婦が離婚の合意をして別居し、両者の間に夫婦の間に夫婦共同生活の実態が全然存在しなくなったが、離婚の届出をしていない状態をいいます。この定義は裁判官の判断によっては、別居後の不貞であっても不貞に該当するという考え方、別居後の不貞から別居前の不貞を推認する考え方、別居後は一切認めない考え方の3つがあるように思われます。

 最高裁では、3カ月で破綻を認めて不法行為責任を否定していますが、別居をしたとしてもこどもがいる場合は直ちに夫婦共同生活の実態がなくなる、とするのは無理があるように思いますので、私が家事調停官などでしたら破綻後の不貞行為でも一定期間は貞操義務は直ちに消滅するものではないと考えます。この点は、裁判官によって考え方が分かれ、むしろ別居後の証拠では一切ダメといっている判事も少なくないように感じられます。

 

3 3説は、離婚の合意をしたうえでの事実上の離婚に至らなくても、婚姻関係の破綻後は夫婦間の貞操義務が消滅するものとして、その後に夫婦の一方と肉体関係を持った第三者は不法行為を負わないという考え方です。これは2説と比較すると実務に近いといえます。要するに、別居してしまえば、婚姻関係が不貞訴訟の関係では「破綻」したとみて、意思に関係なく不法行為責任を生じさせないという考え方です。別居は悪意の遺棄とならないように、離婚を前提とした別居と正面からいう別居は珍しいといえます。したがいまして、2説のように、離婚の合意までは必要ないという見解のように思われます。ただ、2説と3説の間では、現実的には、夫婦間で離婚協議が行われていることが珍しくないいといえるので、有意な差はないように評価できます。

 

4 夫婦の一方の他方に対する貞操請求権を侵害するかは、他者の自由意思に依存するものであるから、一方の被侵害利益は第三者からの保護という観点からは薄弱となる。ゆえに、第三者が不貞行為を利用して夫婦の一方を害しようとした場合のみ不法行為が成立するという見解です。

 この4説ですが、正直、あまり臨床を知らない学者の形而上学的議論のように思います。要するに、「ハニートラップ」のような悪質のような場合に限り不法行為責任が生じるというものです。しかし、一般的に不貞行為はもちろん自由意思で不貞をするケースがありますが同一目的をもっている職場でのことや、あるいは、離婚の悩みを相談している際に生じることが多いものです。ですから、4説ですとほとんど不法行為責任が生じる余地がなくなり、非常識な結果となりますし、主観的な意図の認定が難しいと考えられることからあらゆる角度からみて妥当性がないでしょう。

 

5 貞操請求権は、対人的権利であり、その侵害は相対的なものであるから第三者による債権侵害であるから、暴力、詐欺、強迫など違法行為の手段によって強制的・半強制的に不貞行為を実行させた第三者に限って不法行為を認めるというものですが、債権侵害と考えるのであれば、これら暴力などのしぼりは理論的に必要ないはずであり、理論的になり成っておらず主張自体失当であるように思われます。

 

6 いかなる場合にも第三者は不法行為責任を認めるべきではないということです。

 これは多くの学者が支持しているものです。そもそも不貞をした両者が自由意思で性交渉した場合、その場に居合わせない第三者に不法行為となることなどあり得るのか、物事は相対的ではないのか、夫婦間の慰謝料請求で処理すれば足りるのではないか、ということです。この学説は影響力があり、不貞の慰謝料の減額や事実認定が厳しくなっているのは、不貞の慰謝料否定説の影響を受けていると考えられています。

 

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