不貞行為を理由に地裁で配偶者を訴える場合の慰謝料額

不貞行為を理由に地裁で配偶者を訴える場合(一般的な離婚訴訟などでの慰謝料請求とは違います。)

 

1 基本的には、配偶者については離婚も視野に家裁で調停や人事訴訟をすることが多いことから、地方裁判所で不貞裁判が起こされるということは少ないと思います。しかしながら、有責配偶者の場合は、有責配偶者側からは、3要件を満たさない場合は調停や離婚訴訟を提起せず、また、他方配偶者側も婚姻費用など経済的事情から離婚を望まない場合、自ら離婚調停や離婚訴訟を提起するわけにはいきません。

  そこで、地裁で不貞訴訟を提起するという流れが一般的なのではないかと思います。

  請求額は平均350万円、認容額は90万円程度です。私が担当した別居夫婦の不貞裁判でも90万円前後でした。なぜでしょうか。これは、夫婦が家裁ではなく地裁で不貞訴訟を争う訴訟についてその限度で取り上げます。

2 公表判例をみると、それなりに行為態様が悪いものが多いものが多いような気がします。例えば、①妊娠をした、②不貞、悪意の遺棄、こどもの連れ去り、DV、③元妻が元夫に対して、不貞行為、暴言、嫌がらせ、離婚届提出強要がある。なお、私が担当した事案は、サッカー・サークルが不倫倶楽部になっており、妻が複数名と不倫をしていたという事案である。その後、DVでっちあげ、こども連れ去り、嫌がらせなどがあった。

3 さて、フレームワークをみると、判決文の当事者欄を埋めるために婚姻期間を記載する必要があるだけで、実際、認容金額と婚姻期間の関連性は認められなかった。

  問題は、円満、中間的、破綻に瀕している、の婚姻破綻のレベルであるが、基本的に不貞時を基準とすると、円満、中間的なものが多いが、別居時を基準にすると、破綻に瀕しているものも多いと思われる。個人的な話題なところでいえば、裁判官は、不貞行為について、もともとの円満度合いについて破綻に瀕しているものが多いと考えているのではないかと思われる。そのため、90万円前後にとどまっていると思われる。ただし、配偶者は離婚訴訟でも財産分与、離婚に伴う慰謝料を支払う必要があるのであって、離婚慰謝料が90万円ではないことに注意を要する。

4 こどもについて言及しているものもあるが、やはり渉外系である。これは日本在住のアメリカ人が、アメリカ在住のアメリカ人と一緒に住む計画があったが、被告の不貞行為により実現できなくなったというものである。特に、判決文がないため不明であるが、長男をニューヨークに連れ去ったことについて、慰謝料算定の要素となっている。

5 ところで、色々議論はあろうが、我が国の不貞訴訟は学説は廃止論が通説化しており、離婚訴訟のように調整が必要となる場面が少なく、白黒つけるというような発想が多く、怒りをぶつけてくるような訴訟が、訴訟になると多いのが実態である。

  しかし、こどもに関することは、アメリカに連れ去られた渉外家事については別途に考えられる。しかし、こどもも被害者であり、こどもも、不貞によって非監護親との別れなど共同生活の利益は喪失される。特に子の連れ去りなどで父親を失ったなどの喪失感は大きいケースがある。

しかし、日本の裁判官は、監護親の損害に織り込んでしまうのが実情である。つまり、不貞相手にこどもが賠償請求することは法的因果関係すらありそうなのにできないのが実務である。日本の民法がこどもの利益を無視した構造になっているところに問題があるといえる。

6 その他、不貞行為を理由として財産分与を放棄している合意がなされている場合は、財産分与を放棄することで慰謝料を支払ったものとするのが、当事者間の公平にかなうものとして、判決が30万円の限度で許容されている。

7 不貞行為を探索するための調査費用については、慰謝料算定の一事情として考慮することはあっても、そのままその費用負担を不貞行為と相当因果関係のある損害として認めた事例は見当たらないと思われる。

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