よくある質問

不倫相手の責任は離婚の場合の一方と同等なの?

東京高裁昭和60年11月20日は次のように説示しており、まずは夫婦間の問題解決を促している。

「合意による貞操侵害の類型においては、自己の地位や相手方の弱点を利用するなど悪質な手段を用いて相手方の意思決定を拘束したような場合でない限り、不貞あるいは婚姻破綻についての主たる責任は不貞を働いた配偶者にあり、不貞の相手方の責任は副次的なものとみるべきである。けだし、婚姻関係の平穏は第一次的には配偶者相互間の守操義務、協力義務によって 持されるべきものであり、この義務は配偶者以外の者の負う婚姻秩序尊重義務とでもいうべき一般的義務とは質的に異なるからである。
 本件についてみると、花子は控訴人に対して雇用主の妻という社会的、経済的に優越した立場にあったのであるから、控訴人の誘惑的言動も少なくとも初期においては、花子の意思の自由を拘束するようなことはなかったと認められ、このような状況の中であえて守操義務に違反した同女の責任が大きいことは否定し得ない。

 このことを勘案すると、控訴人の行為にみられる無責任な享楽的傾向を考慮しても、被控訴人の精神的苦痛を慰謝するに五〇〇万円をもってするのを相当とした原判決(いわゆる欠席判決である。)の慰謝料額の判断は、いささか過大といわざるをえず、前認定の諸事実及び弁論の全趣旨に照らすと、被控訴人に対し支払われるべき慰謝料の額は金二〇〇万円をもって相当とする。」

 

同じく東京地裁平成4年12月10日も以下のように副次的なものとしています。たしかに、個々の具体的な事案をみるときには、殊に、不貞関係の発端、継続について不貞配偶者が主導的な役割を果たしている場合や、不貞関係の後に不貞配偶者に対しては宥恕しながら第三者に対してのみ不法行為責任を追及している場合などに、不貞行為の相手方となった第三者に対する慰謝料請求を認めることには、割り切れない点が残るところである。

 横浜地判平1・8・30判時1347号78頁は、不貞関係の発端は不貞配偶者(夫)が被告女性を再々強引に呼び出して暴行脅迫を加えた上関係を強要したもので、肉体関係の継続についても不貞配偶者の暴行脅迫により続けられたという事実関係の下において、不貞の相手方女性に対する妻からの慰謝料請求を棄却している。
また、横浜地判昭61・12・25本誌637号159頁は、夫の不貞行為の相手方に対する妻からの慰謝料請求につき、認容額を低額にとどめた上(請求額1000万円に対して150万円を認容)、判決文中において、夫も妻に対して不法行為責任を負い、両者は不真正連帯債務となることを説示しているが、学説にも、不貞行為を理由とする損害賠償請求の認容額は名目的な額にとどめるべきであると説くものがある(島津一郎「不貞行為と損害賠償」本誌385号116頁)。
 三 本件は、不貞関係の解消後、夫婦間の関係が修復して、妻は夫に対して宥恕していながら、不貞の相手方女性に対して慰謝料請求をしている事案である。宥恕しているのであれば、債権放棄をしているのではないか、と考えられてもおかしくないと思うところであり、50万円という少額とはいえ結論の妥当性という観点からは疑問が残るといえそうだ。

 

前記認定事実を前提として、判断するに、被告は原告と一郎とが婚姻関係にあることを知りながら一郎と情交関係にあったもので、右不貞行為を契機として原告と一郎との婚姻関係が破綻の危機に瀕し原告が深刻な苦悩に陥ったことに照らせば、原告がこれによって被った精神的損害については不法行為責任を負うべきものである。しかしながら、婚姻関係の平穏は第一次的には配偶者相互間の守操義務、協力義務によって維持されるべきものであり、不貞あるいは婚姻破綻についての主たる責任は不貞を働いた配偶者にあるというべきであって、不貞の相手方において自己の優越的地位や不貞配偶者の弱点を利用するなど悪質な手段を用いて不貞配偶者の意思決定を拘束したような特別の事情が存在する場合を除き、不貞の相手方の責任は副次的というべきである。
 本件においては、
 (1)  被告と一郎との関係は、職場における同僚であるが、一郎は主任として被告の上役にあったものであって、被告において一郎の自由な意思決定を拘束するような状況にあったものとは到底認められず、前記認定事実に照らせば、むしろ、右両名が不倫関係に至り、これを継続した経緯においてはどちらかといえば一郎が主導的役割を果たしていたものと認められること、
 (2)原告と一郎の婚姻関係において不和を生じ、破綻の危機を招来したことについては、確かに被告と不倫関係を生じたことがその契機となっているとはいえ、夫婦間の信頼関係が危機状態に至ったのは一郎の生来の性格ないし行動に由来するところもあるものと認められ、また、一郎がこのような行動をとったことについては、原告と一郎との夫婦間における性格、価値観の相違、生活上の感情の行き違い等が全く無関係であったかどうかは疑問であること、
 (3)婚姻関係破綻の危機により原告が被った精神的苦痛に対しては、第一次的には配偶者相互間においてその回復が図られるべきであり、この意味でまず一郎がその責に任ずるべきところ、原告はこの点について一郎に対する請求を宥恕しているものと認められること、
 (4)原告が本件訴訟を提起した主たる目的は被告と一郎との不倫関係を解消させることにあったところ、本件訴訟提起の結果被告と一郎との関係は解消され、この点についての原告の意図は奏功したものと認められること、
 (5)この結果、原告と一郎との夫婦関係はともかくも修復し、現在は、夫婦関係破綻の危機は乗り越えられたものと認められること(この点につき、原告は、本人尋問において、一郎と離婚するつもりであり、夫婦間の性交渉も拒否していることを供述するが、一郎は証人尋問において、原告から明確な形で離婚を求められたことはなく、平成四年五月以降は性交渉を含めて平穏な夫婦関係に復している旨を証言しているものであって、原告の右供述は、一郎の右証言内容及び周囲の客観的状況(原告と一郎は同居しており、現在に至るまで、原告から一郎に対して離婚調停、離婚訴訟等は一切が提起されていないことはもとより、離婚について親族を含めての話し合いが持たれたこともない。)に照らし、にわかに信じることはできない。原告本人の右供述は、法廷当事者席の被告に聞かせることを意識しての発言というほかはない。)、
 (6)被告と一郎との関係解消は、一郎の反省によるというよりも、むしろ被告の主体的な行動により実現されたものであって、被告が勤務先を退職して岩手県の実家に帰ったことによって最終的な関係解消が達成されたこと、
 (7)被告自身も一郎との不倫関係については相応に悩んでいたものであって、一郎との関係解消に当たって、勤務先を退職し、意図していた東京における転職も断念して岩手県の実家に帰ったことで、相応の社会的制裁を受けていること(これに対して、一郎は、従来の職場に引き続き勤務しているものであって、少なくとも社会生活上の変化はない。)
等の各事情が指摘できるところである。
 右各事情に加えて、その他本件において認められる一切の事情を考慮すれば、本訴において認容すべき慰謝料額は金五〇万円をもって相当と認める(ところで、原告の被った精神的苦痛に対しては、一郎も不法行為に基づく損害賠償債務を負うことが明らかであるところ、被告の義務と一郎の義務とは重なる限度で不真正連帯債務の関係にあって、いずれかが原告の損害賠償債権を満足させる給付をすれば他方は給付を免れ、給付をした者は他方に対して負担割合(本件においては、一郎の負担割合は少なくとも二分の一以上と認められる。)に応じて求償することのできる関係にある、と解される。)。
 なお、付言するに、本件においては、現在、本件訴訟の提起を契機として被告と一郎との関係は完全に解消されており、被告においてはもはや一郎との交際の再開を全く考えておらず、一郎においても、被告と関係を持ったことを反省して、原告との夫婦関係を修復してこれを維持していくことを強く希望していることが認められるものであるから、原告においても、過去における被告と一郎との関係に徒らに拘泥することなく、今はむしろ、一郎との間の夫婦関係を速やかに修復して、ふたりの間の信頼関係の構築に務め、今後夫婦関係を平穏、円滑に発展させていくことが、強く望まれるところである。

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