不貞行為の裁判について慰謝料の考慮要素等

1 一般的に、不貞行為の損害賠償請求では、相手方のみを被告とするケースが全体の80パーセントを占めています。ちなみに配偶者のみの請求は4パーセントという低さです。

これは、配偶者との関係では、①離婚訴訟で財産分与を含む形で解決されている、②今後、離婚調停、協議調停、離婚訴訟の駆け引きの中の因子となることが予定されているので、慰謝料のみの請求が少ないこと、③離婚を決断するまでには至らず懲罰的に相手方に訴訟を提起しているケースが多いからではないからと臨床的には思われる。

2 共同不法行為として、配偶者及び不貞相手に裁判を起こす場合の平均請求額は、638万円とのことであるが、感覚的には、やや高額な印象を受けるのであって、興信所代などが含まれている可能性もある。

  一般的に不貞相手のみが訴えられることが多いが、セットで訴えられる場合は、たいていは、配偶者と不貞相手が同居している事例が多くを占めている。この場合、経験的には、有責配偶者からの離婚請求の法理のため離婚が認められないことから、配偶者は、他方の配偶者との協議、調停、訴訟を放棄して、形式よりも実質をとっているということになる。

  このような場合、裁判を起こす場合、請求額自体は勢い高額になりがちになるが、余り高額すぎると離婚請求においても破綻が認められ、かつ、有責配偶者からの離婚請求も信義則上許容される可能性も生じることは注意する必要がある。

  このようなケースでは、不貞をした配偶者に対し250万円、不貞相手に150万円の限度で認容し150万円の限度で連帯とすることでバランスをとる判決もある。実際の裁判官レベルでは少ないが、ている一義的な賠償責任は夫婦間で清算すべきという裁判例も散見されるところであり、共同不法行為とすることで、不利な判決になる可能性にも留意すべきであろう。

3 一般的に慰謝料額の決定要因は、「一切の事情」という形で、刑事事件の相場観と同様、理論的に解明はされてこなかった。今後は、損害賠償額の増額のポイントが明示され、そこに攻撃防御が集中するというのが望ましいのではないか。

  抽象的にいえば、不貞行為前の夫婦共同生活の円満さの程度が高いほど損害が大きく、破綻をしている程度が低いほど損害も小さい。他方で、不法行為の損害として、回数が頻回であれば、精神的苦痛は大きいといえる。しかしながら、実務的な感覚では、仮に、〇月〇日に不貞をしたというように、厳しい特定を求められる場合、回数は少なくなるが、、期間としての回数が多くなりそうな特定の仕方でも、損害賠償額に大きな差はないように思われる。すなわち、2週間程度に3~4回の不貞行為でも200万円程度が命じられたケースもあるのであって、不貞期間がさほど有意であるかは不明であり、婚姻破綻との因果性が最も重視されているのではないかと思われる。

4 そこで、婚姻期間であるが、一般論をいえば婚姻期間が長い夫婦を破綻させた場合、賠償額は高くなると思われる。しかし、現実的には家庭内別居をしたり別居をしたりして円満を欠いている場合も少なくないといえる。したがって、「形式的」な婚姻期間には、十分な有意性が認められない。

5 慰謝料額の算定に大きなウェイトを占めているのは、「不貞行為当時の円満の程度」である。婚姻関係が破綻していたら不法行為が成立しないが、著しく毀損していたとか、毀損していたなどの評価はみられる。

  この点、通常の夫婦関係の場合は、224万円程度がベースラインになるという見解がある。しかし、通常の夫婦関係の場合、1回の不貞発覚で別居=破綻にまで至るケースは少なく、婚姻破綻が保護法益ではなく精神的苦痛が保護法益になる場合は150万円程度がベースラインのように思われる。

  次に、不貞が発生する場合、たいてい夫婦の悩みなどを相談しているなどの例が多く、円満とはいえないが、破綻が近いというわけでもない中間的なものについては、177万円がベースラインとなる。

  そして、婚姻関係が著しく毀損している場合については、93万円がベースラインとなるといえる。

  このようにみてくると、不貞行為当時、どの程度婚姻関係の円満さが保たれているかは、慰謝料額算定の大きなウェイトを占めることになることが分かる。今後は、上記で述べている通常、中間、不満、毀損の4つの事実的類型のポイント化を進めていくことが重要なように思われる。

  すなわち、示談交渉の場合には指針があった方が良いし、訴訟は指針外以外の怨念で訴訟を起こしてくる者も少なくない。中には、弁護士会の副会長経験者ですら証拠提出に公開法定で「リベンジポルノだ」などくだらない弁論を展開したり、むしろ不貞される側に問題があるといわんばかりの攻撃的立証(でっちあげDV)、離婚に関連することから、離婚と同じ代理人とだったりすると人格攻撃を仕掛けられる場合もある。

  しかしながら、上記のとおり、裁判官的視点からみると、いくら場外乱闘をしようと、概ね金額は4つに類型化して、それに婚姻期間や不貞の回数などで加算調整する程度であるので、弁護士も含めてこうした不毛な裁判を予防するために、ある程度帰納的な数字は共通項としておく必要性があると解される。

6 次に不貞期間であるが、これはウェイトを置くことも相当ではないと思われる。結局は、自白証拠に頼らざるを得なくなり、当事者の証拠収集活動で恐喝的な行為の誘発がなされるからである。もっとも、始期については、裁判所から明らかにするよう求められることが多いのではないか。そのうえ証拠に乏しい争点であるため、比較的争点となりやすいが、最終的な慰謝料額に対する影響には乏しいので、争点から外すことも考えてはどうなのだろうか。

  ある論説によると、不貞期間の長短は慰謝料のばらつきが大きいことから、慰謝料算定の要素にはなっていないと考えられるとの指摘もある。私も紹介したが、ある論説でも3か月で3回の不貞でも300万円という慰謝料が認められているものもある。それだけ、破綻との因果性が重要であることの証左ではないかと思われる。

7 次に、不貞行為の態様の悪質さが考えられるが、積極的加害意思をもって婚姻関係を破綻させようとしたようなものは、不貞の回数が少なくても悪質と評価され高額の慰謝料が認められていると思われる。具体的には、妻への嫌がらせ、積極的加害意思、離婚要求、計画的妊娠などが考えられる。

  なお、未成熟子がいる場合は平等原則から考慮しないと明らかにする裁判官もおり、見解が分かれるところと思われる。ただ、こどもがいた場合、破綻の際の精神的苦痛の程度は大きくなるという意味で中間項を介して影響があると考える。

8 一部弁済を受けていると評価できるケースについては、私も、実質的に離婚での清算金が慰謝料目的として充当されるべきとして、請求を棄却させた事例があった。このように、既に一部支払いを受けているとして、慰謝料額から減額をしているケースもある。判決で認容された金額と実際の慰謝料額が一致しない場合、ここでは最終的な認容額に影響を与える。

  一例を挙げると、元夫が元妻に離婚調停で100万円を支払っていることが考慮されている例もあるが、財産分与としての交付の場合に充当を否定した東京地裁判例もあり、調停での弁論には注意を要するものと思われる。

9 消滅時効に関しても、継続的不法行為の主張は、今日では裁判所に受け入れがたいと考えられているようである。つまり、個別的な不法行為であるので、時効も日々消滅すると理解されているので、消滅時効の抗弁も有効性を持つ場合がある。

10 弁護士費用についてみると、いずれも不法行為であり1割を認めている。特に示談が不成立になった場合には弁護士を就ける必要性・相当性が認められると思われる。

11 調査費用については、興信所などを通して行動調査をすることが既に一般化している。しかし、東京地方では、100万円程度の調査費用がかかり、名古屋の良心的な業者でも1~3日の調査でも30万円程度が目安のようである。ところで、弁護士は、事実を調査することはできない。料理で例えれば、弁護士は「料理人」であり、「素材」を集めるのは依頼者責任で行ってもらうことになる。弁護士と探偵業者が提携している例もあるが、弁護士倫理に反する行為と思われる。たしかに、不貞が間違いないものの裁判をするためには証拠が必要であり、個人的な実感では、セックスについて会話したメールやラインや一方の自白調書がない限り探偵資料がメインとして必要になると思われる。たしかに、領収書、交際シーンの写真、GPSの行動動静、ラブホテルのチケットなど間接証拠もある。しかし、これらは料理で例えれば「スパイス」の類に過ぎず、副食材だけでは、料理を成り立たせることはできない。刑事訴訟法でも、検察は事実の調査機関を持っているわけであって、私人が調査をした場合、相当因果関係のある損害であるのか、興信所業界が「怪しく」、代金も一律ではないという実質論で、調査費用の認定は裁判官としては、躊躇せざるを得ないのではないかと思われる。裁判例では、わずかに認めたもの、慰謝料額算定にあたり考慮するものもあるが、今後客観証拠を裁判所がレベルの高いものを要求するにつれて、相当因果関係ある損害として弁護士費用1割のように、定額で認めること、例えば損害額の1割とする慣行を確立することも考えられる。調査費用については、全額認められると被告としても予想外の出費となり、求めてもいない調査の日用を負担することになり損害の公平の分担の趣旨に反するという反論もあろう。この点は、将来の残された課題というべきである。

2018/06/03

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