婚姻関係破綻の故意過失/服部弁護士

・婚姻関係の存在及び婚姻関係破綻についての相手方の故意過失
 
 不倫の慰謝料請求をするに際して、「故意・過失」が要件になっていることを忘れている法律家と知らない依頼者は意外と多いと感じる。なんとなれば「不貞の慰謝料請求」という特別な訴訟類型があると考えて、不法行為の要件である「故意・過失」が抜け落ちているというわけである。同じことは離婚慰謝料にもいえる。離婚に至る経緯を詳細に述べるのだが、かかる経緯の中に当然に「故意・過失」が含まれるというわけではなく、釈明をなされるケースもある。
 
 ところで、最高裁平成8年の影響により破綻後は、不法行為責任は負わないとされたので、不法行為における故意・過失にも当然、同判例の影響を受けることになる。といっても、具体的にどのようなことが「故意」であり、どのようなことが「過失」であるのだろうか。
 
・問題になるのは、不貞の相手が婚姻していたと知っていたことが要件になること
 
 まず結婚をしていなければ自由恋愛であるので不法行為責任を負うことは原則ない。難しいのは、婚姻破綻との関係であり、婚姻関係が客観的に破綻していなくても、主観的に破綻をしていないことについて認識がなく、かつ、認識がないことについて過失がない場合は、いずれも「故意・過失」を欠くことになる。
 
 パースペクティブ
 
藤崎十斗:えへへ、僕も叔父さんに話したけど、初恋の経験をしたけど、彼氏がすでにいるかは気になったけど、大人の世界では交際するにあたって、独身であることを調査する義務ってあるのかな。たしかに一定の年齢に達している場合とか、こどもがいるとか、そういう方は結婚している可能性はあるよね。
 
服部弁護士:原則としては、調査義務はないとして過失は認めていません。そこまで交際を制限するのは不当だ、という価値判断があるんでしょう。法律相談で、独身だとだまされたという内容のものに接することがありますが、そもそも口頭で聞いても男女の世界には駆け引きもあるから真実を語るとも限らないですしね。
 
藤崎十斗:具体的にはどういう場合に過失が認められるのかな。
 
服部弁護士:意外かもしれないけど、「そりゃ普通、結婚を前提とした交際なら別れるでしょ」「なんで別れなかったの」という事態が生じたときとまとめられるかなあという感じです。
 
藤崎十斗:こどもがいるとか?
 
服部弁護士:裁判所はそれだけで決定打にしないけど、通常は、婚姻をしている一事情として婚姻しているか否かを確認する義務が生じる時点と考えるかもしれないね。ただ、もっと直截に「妻にバレた」とかのケースが多いけれど、判例の中には、年長で結婚指輪をしている場合は過失ありとした判例もあるよ。
 
藤崎十斗:それはおかしいね。死別の場合、年長で、亡くなった妻との間の指輪をつけている人なんて普通にいるじゃん。やもめの人。
 
服部弁護士:そういう批判もあるのでその判例は無視していいと思う。基本的には、不倫の慰謝料請求訴訟の場合は、最初から不倫でしたというケースは意外と多いとまではいえず、途中で婚姻関係を知るに至ったというケースもあります。
 
藤崎十斗:でもさ、僕だったら、二重に女の子と付き合っていても、もう一人の子とはうまくいっていないんだ、きっと明日には関係は完全に終わるよ、って伝えるな。大人もそうでしょう。
 
服部弁護士:そうだね。婚姻関係の存在を知ってから交際をするのはアウトなんだろうけど、例えばフジテレビの秋元優里・前プライムニュースキャスターのように、別居して離婚に向けて協議中という場合であれば、不貞の相手方に対して「たしかに独身ではないけど、既に破綻して離婚の交渉中なの」と伝えることはあるね。これが現実に離婚調停ないし離婚訴訟をしていれば良いのだけど、現実は家庭は家庭できちんと維持している人が方便で述べた場合に問題が大きくなるケースが多いね。
 
藤崎十斗:でもさ、最高裁の判例からすれば、婚姻破綻の認識があれば「故意・過失」がないと考えないと首尾一貫しないよね。
 
服部弁護士:論理的にはその通りなんだけど、既婚者であることを隠していた人が今度は、破綻をしているとか、離婚交渉中というのは、常套句で普通は信用しないという経験則があるというのが裁判所の考え方で、ここに過失ありと認めることがあるみたいです。だからこそ、「相当の理由」、具体的には、離婚調停を起こしている申立書をみたとか、別居中で別居から相当期間経過しているように思われたなどが相当の理由の中身になるかもしれないね。あと、意外ですが、故意・過失は、原告が証明しないといけないので、不貞をした人の内心を証明する必要があるので、証明活動が難しいと一応いえるのではないかと思います。
 
藤崎十斗:じゃあさ、どういう場合であれば、既婚の方と付き合っても、故意・過失がない、突き詰めると破綻していると信じるに足る相当の理由があるのだろうか。
 
服部弁護士:実は、裁判例では、離婚紛争で一審で離婚判決が出て、二審で離婚が覆されるまでの間の交際に相当の理由が認められたくらいであとは大体認められていないんだ。
 
裁判所のベースとしては、「独身」じゃないと知った以上は、法令上、調査義務が生じると考えていると解してもいいのではないかな。具体的には、離婚した旨の不貞の相手の言葉を信じても疑わしい事情が複数存在し問いただすことができた、と指摘したものがあるのだけど、調査義務に昇華しているといえそうだね。これを前提とすると、信じたとしても破綻を基礎づけるものではない、愚痴は破綻を基礎づけるものではない、汚い恰好をして家事が行き届かなくてもそれと破綻は関係ない、不貞相手の話で信じるのは軽率、そもそもそのような話を聞きながらこそこそ正妻に発覚しないように行動すること自体がおかしい、というものだね。しかし、中には、別居後3か月程度で破綻しているとの認識には過失がある、というものもあるけど、僕の意見とは合いませんね。
 
藤崎十斗:まあ、別居自体が破綻という判例が多く、その後3か月も経過していたら客観的に破綻している可能性すら否定できないものね。でもさ、好きになっちゃうと相手のことを信じるものだよね。信じたあんたが悪いといわれるのも・・・。
 
服部弁護士:少なくともメルクマールは同居しているかだね。こどものことがあるとか、縷々いうのだけど別居していない場合は、騙されていると気づくべき、という裁判所的道徳観なのでしょう。
 
・第三者は、婚姻関係の破綻に際し、どこまでの確認義務があるの
 
藤崎十斗:これは学生の恋愛でもあると思うんだけど、僕がA子に恋をして交際を始めたけど、A子はBという彼氏がいましたみたいな展開はよく典型的少女漫画にもあるよね。A子に聴いてもBとは別れたといわれたら、僕としては、これ以上、何をしたらいいのだろう。例えばA子の友達やBに直接確認する義務があるなんていうのはナンセンスだよね。フェアじゃないし、ストーカー扱いだよ。
 
服部弁護士:ある裁判例では、住民票、その母親から事情を聴くなどらしいけど。
 
藤崎十斗:バカバカしいよね。僕がA子ちゃんと交際するために、彼女の母親のところにいって、「他に男はいないですよね」とか質したら、「うちの娘が淫乱だっていうのか」といってビンタされた挙句交際も認めてもらえないよ。
 
服部弁護士:十斗の指摘は重要で確認義務といっても、住民票なんか取れるわけないし、もともと婚姻に至らない程度の自由恋愛で交際している場合に、住民票をみせろなんていえないし、母親に会わせろともいえないし、結局、交際相手から詳細に聞くしかないけど、これでは不十分ということになるから、最高裁平成8年を無視する結論になるから、この点は、注意する必要があるね。でも弁護士としてもびっくりするものがあるのも事実です。別居後3か月だったら客観的に破綻している可能性すらあるわけであって、判決が云々というのも、交際相手にすぎない人物が判決文を入手するのは一般論としては困難だよね。そして、協議離婚をしている場合であっても、偽装離婚であることを容易に知り得たという判決があるのですが、なんかここまでくると結果論、結果責任で、民法の行為責任主義とも真っ向から矛盾し、理由不備、理由脱漏の違法があるというしかないのではないかな、と思います。
 
(愛知県弁護士会 服部弁護士)

2018/01/21

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