婚姻関係っていつ破綻する/服部弁護士

不貞行為を理由とする慰謝料請求が認められるには、まず請求原因で不貞行為が存在することが必要で、かつ、それで足ります。しかし他方、最高裁平成8年3月26日判決は、欧米の不貞の慰謝料否定説の影響を受けて、不倫慰謝料が認められる範囲をしぼりこみました。具体的には、肉体関係当時、婚姻関係が破綻していた場合は、不倫慰謝料は発生しない、とされたのです。そこで、不倫をしたといわれている側は、当時破綻していたという抗弁を反論として主張することになります。
 
 
 
不貞訴訟では、婚姻関係の破綻、婚姻関係の破綻について過失なく破綻していると信じたという言い分が出されるのは、全体の半分にも上ります。
 
 
 
しかしながら、婚姻破綻が認められたケースは10パーセントほどです。不貞行為当時の破綻を認めなかったケースは9割に上ります。もっとも、裁判所は破綻の程度で慰謝料の額を調整しているので、9割がすべて円満とまではいえないのです。
 
 
 
パースペクティブ
 
藤崎十斗:不貞行為の慰謝料請求事件全体では妻が原告になるケースが7割です。
 
服部弁護士:個人的には、婚姻関係が争点になったものでは65パーセントということもあり、執務上の経験からいっても半々といった印象を受けます。
 
藤崎十斗:不貞行為の相手方だけを被告とするケースが80パーセントですね。
 
服部弁護士:これは難しいのですが、不倫慰謝料は離婚の前哨戦のような訴訟位置づけになることがあり、したがって不貞相手の方だけが被告となることが多いということのようです。ただし証人尋問にまで進むと、離婚の際の配偶者も敵性証人として出廷することも多いので、前哨戦、あるいは、離婚は終わったのにリターンマッチとして行われるという側面が社会学的にはみられますね。
 
藤崎十斗:同居を続けているケースもあるんだ。
 
服部弁護士:今回は、婚姻破綻がテーマなので、同居で破綻しているということは少ないのですが、家庭内別居、性交渉の少なさ、離婚届けの突きつけなどの事情によっては、家庭内別居が認められるケースも少なからずあるのではないでしょうか。
 
藤崎十斗:前倒しの議論になってしまいますけど、不貞行為が8月に行われていたら、7月に破綻なら認容、9月なら棄却となるわけですよね。したがって破綻時期の認定が問題になりますね。
 
服部弁護士:そうですね。ただ、十斗がいうような設題だととてもシビアな認定になると思うのですが、大局的な統計だと、婚姻破綻肯定のケースは1割、否定のケースが9割という中で、婚姻関係の毀損による慰謝料額の減額の方が実質は争点になっていると思います。ですから、学者が理論的に「破綻時期が争われる」というわけですし、裁判所もいつ破綻したのか関心がありますが、実務上は、信じて弁護活動はするのでしょうが、示談では、相対的に金額の提示をしているのではないでしょうか。
 
藤崎十斗:婚姻関係の破綻の程度が慰謝料額に影響するんだね。
 
でもさ、不思議だよね。そもそも、パパさんとママさんが、仲が悪くなったから不貞してしまったんでしょ。だったら、相手方からすれば、婚姻関係が破綻していたという主張が出るのは当たり前だよね。でも、先生は、9割は認められないという統計を示すわけで、なんか実態と裁判の乖離が見えるね。
 
服部弁護士:その理由はよくわかりません。一説によると、相手方だけが訴えられた場合、不倫相手の配偶者は訴訟外なので協力が得られないことが原因と指摘する見解もあります。しかし、現実には、求償権というものがありますから、訴訟外でも利害関係があります。ですから、不倫をした配偶者サイドも不倫が認められてしまうと「有責配偶者」として離婚が相当困難になるうえ慰謝料も法外な金額になりますから、婚姻は破綻していたという証明に協力することが実際は多いようにも思います。ですから、共同被告とされている場合と比べて、破綻が認められている率に有意な差がないのは、利益衡量上、実質的には変わらないからかな、と思います。
 
藤崎十斗:むしろ同居している場合は困難が伴いますよね。
 
服部弁護士:そうだね。例えば妻と不倫した男性の場合、妻が夫と同居しているというような裁判を数件やったことがありますが、妻としては「もとさや」に戻ることを選択した以上、婚姻関係は良好だったと証言するでしょうし裁判への出廷も拒むことが多いですね。そうなると、情報が客観的に少なくなる、夫婦関係の破綻の主張が認められない理由の遠因になる可能性がありますね。
 
藤崎十斗:社会的関係性が婚姻破綻と結びつくことはあるの?
 
服部弁護士:ないと思います。一般的には、関係性は、職場関係、従業員、顧客、風俗などですね。だから、直ちに婚姻関係が修復不能な程度に至っているというのは論理に飛躍があると思います。
 
藤崎十斗:正直、アンチソドミー法や覚せい剤取締法のように、かなり家庭内に踏み込む問題だから、その主観的関係性の証拠は限られるよね。
 
服部弁護士:最近は、ツイッターやインスタグラム、やや年齢層が上の人はフェイスブックをやっている人がいます。また、ラインの会話歴など証拠は時代の変化で増えつつあるかなと思います。
 
藤崎十斗:SNSが決定打になるの。
 
服部弁護士:こういう裁判は間接事実の積み重ねしかないので決定打はありません。一部では、不貞をした配偶者の自白の陳述書ないし証言が重要な証拠資料という見解もありますが、現在の居住環境をみると、信用できないケースもあるのでケースバイケースだと思います。
 
藤崎十斗:付け加えると、「婚姻破綻の時期が問題となる」という問題の立て方は正しいのかな。
 
服部弁護士:うん。現実は、不貞行為がいつあったかがそもそも不明、というケースもありますね。ですから期間で何か月間というわけですが、実際はピンポイントでの証明を好む裁判所もあります。ですから、「不貞行為が先にあって、その時点で破綻していたか否か」という問題の立て方もあるよね。特に裁判所は離婚の切り出しや別居が認められると婚姻破綻を認める傾向にあるから、不貞行為時において、婚姻破綻が後ろなんだ、ということを証明する責任が原告にあるということになりますね。このように、不貞行為の時期が破綻時期よりも前であることが不明である、ことから、請求が棄却されることも少なからずあるようです。
 
・婚姻破綻の認定要素
 
藤崎十斗:欧米では、自己決定で性交渉をしているのだから慰謝料請求は発生しないわけだけど、日本では、破綻しているか否かで区別するので、メルクマールを明確にする必要が本来あるよね。
 
服部弁護士:そうですね。まず、同居したままで破綻を認定した例はありません。
 
藤崎十斗:日本の裁判所は別居をもってイコール破綻と考えているようだよね。
 
服部弁護士:そうだね。別居がある場合、別居をもって破綻したと認定するケースは相当数あるよ。例外的に、別居後も交流がある場合や、突然別居されて他方が夫婦共同生活の意思を放棄しておらず破綻の認識がない場合は、破綻の認定はできない場合もあります。
 
藤崎十斗:ここら辺はポイントですね。
 
服部弁護士:そう、弁護士としては、別居したのに自宅にいろいろ理由をつけて戻っていると、上記の交流があるとされてしまうので、つらいですね。別居も食事をしているなどです。また、一方が破綻の認識がないといいますが家庭内別居状態、具体的には寝室を分けて性交渉もないというようなケースでは、破綻の認識がないというのも困難はあるでしょう。
 
藤崎十斗:単純に期間で決めればいいのにね。3か月とか。
 
服部弁護士:はは、最高裁平成8年は、別居3か月で破綻を肯定したんだよね。それが独り歩きしてついに別居で破綻まで来たかなという感じですね。
 
藤崎十斗:でも、どのような要素があるのかな。
 
服部弁護士:まあ期間の経過も一つだと思います。ただ、ポイントは不貞行為以前に離婚届けを作成、提出など離婚関連の動きがある場合、離婚調停を申し立てた場合が要素になるようです。
 
藤崎十斗:こうしてみてくると、いわゆる「火遊び」のようなものはアウトで、本気で離婚を考えているような場合は婚姻破綻が認められるのかな、と僕なりの整理になります。
 
(愛知県弁護士会 服部弁護士)

2018/01/21

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